5.困っている子もそうでない子も
ここで、アレルギーのある子にとって理想的なベビーフードを提案してみたいと思います。
第一に、普通のスーパーや薬局などどこでも手に入れることができるように、「アレルギーの子のためのベビーフード」ではなくて、「アレルギーがある子が食べられて、そうでない子はなおさら安心して食べられるベビーフード」である点が肝心です。
第二に、「アレルゲンとなりやすい食品を除去してメニューを作る」という視点からではなく、「アレルゲンとなりにくい食品でメニューを作る」視点で取り組んでほしいということです。
(1) 原材料
まず、主食となる穀類ならアワだのヒエだの、普段は決して食べないような穀物をもってこなくてよいと思います。
親だってそんなものは食べたことがない世代です。「アレルギーの子用の特殊な食品」と思われて敬遠されてしまうもとではないでしょうか。 小麦は抗原性が高いので、お米を中心に考えればよいでしょう。できればたんぱく質が処理された低抗原化米を使用するのが理想的ですが、それでは価格が高くなってしまうというのなら、せめて抗原になりにくい品種(酒米の「あけぼの」など)のお米を使った雑炊やかやくご飯がほしいところです。 さらに望むなら、抗原性の低い米を原材料としたうどん、パスタ類があればメニューがぐっと広がるでしょう。中華メニューをシリーズにしているメーカーがありますが、「五目ビーフン」などがあれば小麦アレルギーの子も麺類が楽しめるのではないでしょうか。ただ、調味料としてのしょう油は大豆・小麦以外を原料としたもの(アワ、ヒエ、魚など)を使ってほしいです。 そして子どものご飯に欠かせないふりかけは、しらすや魚のほぐし身、ゆかり、青のり、刻み青菜や漬物などを使って、余計なものは入れずに作っていただきたいものです。
次に野菜ですが、じゃがいも・にんじん・ホウレンソウが野菜の全てではないはずです。
白菜、キャベツ、大根、カブ、レンコン、ブロッコリー、カリフラワー、かぼちゃ、さつまいも、小松菜、チンゲン菜、ニラ、みつば…。 普通に食卓にのぼる野菜で、アレルギーを起こしにくいものはたくさんあります。抗原性の高いホウレンソウやトマト、豆科に属するさやえんどうやいんげんのかわりに、こうした野菜で献立を作ることは可能なはずです。それを通り越して、あまりポピュラーではないヨモギやアマランサスなどを取り入れるのはどんなものでしょうか。 メニューにするなら、「野菜たっぷり〜赤ちゃんのサイドディッシュ」シリーズなどを作って、「にんじんとカブの紅白グラッセ」「花野菜のスープ煮」「白菜と小松菜の煮びたし」などが月齢別の形状で揃っていれば、彩りも添えられます 。外食の時、大人の取り分けにしても、野菜類はなかなか取り分けにくいので、子供用に一つ準備していけば栄養のバランスもとれます。月齢が進むと、鮭やしらすの小さなおむすびを持って外出する時も多いのですが、野菜のベビーフードが一つあれば便利です。
上の子と一緒にハンバーガー屋さんなどに行く機会の多い子にも使えると思います。
また、魚も同じ。ベビーフードではタラと鮭に偏っていますが、白身魚なら鯛、メバル、イサキ、サワラ、オヒョウ、イシモチ、メルルーサなどいろいろな種類があります。 また、意外に抗原性の低いものとして、ウナギとアナゴがあります。これらはビタミンやDHAもたっぷり含まれているので、高圧調理で骨まで柔らかくして香味野菜と一緒にミンチにすればカルシウムもとれ、とてもよい食材になると思います。 グルメ化に向かうなら、「鯛の野菜あんかけ」とか、「アナゴのかば焼き」などもおいしそうです。また、つなぎに卵白やゼラチンを使用していない白身魚のソーセージやかまぼこも、手づかみで食べたい離乳後期以降の子のためにぜひ作ってほしいです。
肉類に関しては、卵にアレルギーがあるから念のため鶏肉は避けて牛肉のもの、牛乳にアレルギーがあるから牛肉はやめて豚肉のもの、という選択をする場合があります。
ですから、牛肉を使ったメニューには卵やチキンエキスなどは用いない。豚肉では牛肉と一緒にミンチにしたり、卵やバターは一緒に使わない、といった配慮がほしいところです。 離乳も後期や完了期になってくるとお友達や家族とカレーライスやスパゲッティといったファミリーレストランメニューを楽しむことも多くなってきます。「ビーフカレー」にはバター、「ポークカレー」にはラードといった油脂の使い分けや、アレルゲンとなりやすい成分を含まない「ミートソース」などのレトルト製品があれば大変ありがたいものです。
添加物ですが、栄養を強化するものとしてよくカルシウムの添加がみられます。
乳製品が摂取できないことが多いアレルギーの子の場合、どうしてもカルシウムが不足しがちですが、せっかく添加されているものが卵殻、乳清、牛骨に由来するカルシウムの場合、やはり躊躇してしまいます。吸収は悪くても魚骨や貝、サンゴのカルシウム、多少高価でも野菜を原料とした乳酸カルシウムなどを使用してほしいものです。
そして、とろみづけのために何にでも小麦粉を使うのはやめてほしいと思います。必要な場合は原材料に由来した穀粉だけにするとか、芋類のでんぷんで代用できるのではないでしょうか。そして、大豆たんぱく・小麦胚芽・レシチン・酵母エキスなど、普通家庭で作るときには使わないような成分はなるべく添加しないでもらいたいものです。
(2) 表示・パッケージ
一般に除去表示は外箱の片隅に小さな文字で表示してあり、注意しないと見逃してしまいがちです。
しかもメーカーによって表示に該当する材料、表示の場所、表示の仕方(〜を使っていません/使っています)などがまちまちであり、結局裏面の原材料名欄を丹念に調べないとわからないことが多いのですが、赤ちゃんを連れての買い物ではゆっくりと隅々まで検討する余裕がありません。 各メーカー共通で、下記のようなイラストによる表示があれば一目でわかるのに、と思いました。
また、与え方の注意書きに「様子を見ながら量を増やします」などの表現がありますが、はっきりと「嘔吐、下痢、発疹などの症状が出た場合は使用をやめ、医師にご相談下さい」などの記載があったほうが新米ママにはわかりやすいと思いました。
核家族の若いお母さんが頼りにする育児雑誌のタイアップ記事も、「ベビーフードを使った離乳の進め方」「こんなに豊富なラインナップ」「応用メニュー」などのメリット記事ばかり。 読者モデルが登場してリアリティーがあるのはいいのですが、同じ月齢でこんなに何でもよく食べて、体格もよくて・・・ となるとうちはうち、と思ってはみても心中穏やかならぬものがあります。ベビーフードの広告や表示にもデメリットを恐れない、良心的な表現を望みたいところです。
パッケージですが、二重三重に包装され、外箱は多色刷りで大変カラフルなものになっています。
商品の性質上、安全性を第一に考えてあるのはわかるのですが、ホームユースも増えているので、素材ものやフリーズドライなどを中心に包装の簡素化が進んでもよいと思います。 また、オーガニック製品などのパッケージには再生紙の使用やシックなデザインのモノトーン印刷にすれば商品の特徴も際立つのではないでしょうか。 それがアレルギー対応によるコストアップの吸収に少しでもつながれば大歓迎です。
一方、おやつは子どもが友達や兄弟と楽しいひとときを過ごすための、心の栄養源としての意味を持ちます。
アレルギーを持つ子が食べられるお菓子のパッケージにぜひキャラクターを導入してほしいです。「ドラえもん小魚せんべい」「白雪姫のリンゴチップ」「ピーターラビットのにんじんスナック」など、夢のある商品を作ってほしいと思います。 また、こめはぜや干しいもなど素材そのままのお菓子でもTVアニメのキャラクターのおまけなどが付いていれば、普段そういうものに縁がない普通の子とも一緒に楽しめると思うのです。
食物アレルギーの子とはいえ、できるだけみんなと同じ食べ物が食べたいのです。
特殊な食品を特別なルートで購入しなければならない親の負担、みんなと同じものが食べられない子どもの引け目や欲求不満などを解消し、食物アレルギーで困っている子も、そうでない子も、みんな一緒においしく楽しく食べられる。 大量生産が可能である条件とすりあわせ、一つのバリアフリー商品としてこうしたベビーフードの企画開発をここに提言いたします。
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