【子育てグッズ研究会】表紙




1997年度 商品科学研究所 商品研究大賞論文入選作

アレルギーっ子も食べられるベビーフードはありませんか?

この研究ではアンケート調査やメーカーへの問い合わせ、試買・店頭調査等をもとに、食物アレルギーがある子もない子も一緒においしく楽しく食べられる理想のベビーフード像を提案しました。
アンケートではメンバーの友人・知人・保育園の父母200余名が協力して下さいました。また、試買調査ではメンバーの子どもに試食してもらったり、店頭で販売員の冷たい視線を浴びながらメモを取ったりしました。皆の努力が今回の受賞に結びついたと喜んでいます。
この論文が食物アレルギーで苦労なさっている方・不安をお持ちの方に少しでも元気を与えるとともに今後の商品開発のきっかけになることを願っています。


1.アレルギーの子を持つ親として

 平成4年12月6日。初めての子供が誕生しました。妊娠経過も順調で月満ちての普通分娩。2848グラムの元気な女の子に、私たち夫婦は喜びに包まれました。


夫の転勤のため実家から離れた新潟で出産、育児をすることとなった私は、妊娠中から育児雑誌を読み、育児百科のたぐいを読んでそれなりに勉強したつもりでした。
私は花粉症があったので、子供がアレルギーにならないようにと妊娠中は卵や牛乳、肉類を食べるのを控え、玄米ご飯に納豆やゴマを振ったものを主食に、なるべく自然のものを摂るように心がけました。
出が悪かった母乳も生後1カ月を過ぎる頃にはミルクを少し足す程度で、だいたい間に合うようになりました。


その頃から、娘の顔や頭に赤い湿疹が目立つようになってきました。1ヶ月検診では「乳児湿疹でしょう。」ということで、もらった塗り薬を塗るとすぐにつるつるになるのですが、2〜3日もしないうちにまた真っ赤になることの繰り返しです。それでも、そのうちに治るだろうと特に心配しませんでした。


生後2カ月になる頃、便秘気味になったので薬局からサンプルでもらってきたみかん果汁を薄めて娘にやったところ、間もなく全部吐き戻してしまいました。
「赤ちゃんは果汁が大好きって本に書いてあるのに・・・」と不思議に思いましたが、よくあることだと思ってそのときは砂糖湯を飲ませました。それからりんご果汁、いちご果汁といろいろ試してみましたが、便秘が治るのを通り越して下痢便を大噴射してくれました。
この頃から、頭部の赤いジクジクした湿疹だけでなく、背中や肘、膝の内側にガサガサしたはたけのようなものができ、耳の下と目のふちが切れて血がにじみ、体中をかきむしるようになったのです。保健婦さんのすすめで皮膚科に行くと、「生後3カ月ではアトピーかどうかはわからない。」といってまた塗り薬をいただきました。


生後5カ月、離乳開始。娘の湿疹は紙おむつを当てている部分以外全身に広がっていましたが、私も何の疑いもなく、育児書や保健所の講習会の説明通りに進めていきました。離乳食は、これまでミルクや紙オムツを買うたびに薬局がくれたベビーフードのサンプルがたくさんあったので、もっぱらそれを使いました。野菜スープ、フレークがゆ、かぼちゃのマッシュ・・・。
離乳初期は量も少ないし、固さや味付けもよくわからないので、必要な量だけお湯をさして使えるベビーフードは便利でした。


生後6カ月になったある日、うどんとみそ汁を食べた後で勢いよく吐き戻し、間もなく全身にじんましんが現れ、火がついたように泣き出しました。あわてて近くの医院に駆け込み、そこの紹介で大学病院での検査の結果、卵、小麦、大豆、ソバ、ミカン、じゃがいも、とうもろこし、ゴマ、米・・・ 調べたもののほとんどに反応が出たのです。
はじめの4種類は特にランクが高く、ショックを起こす可能性もあるので与えないようにという指示が出ました。その他は、あまりに種類が多すぎて除去しきれないため、食前に抗原の吸収を抑える薬を服用してから普通に食べることになりました。卵やソバなんて食べさせていないのに、母乳を通じて反応を起こすようになってしまったようです。


今までは毎日食べられる食品が増えるのが楽しみで、離乳食をやるのも張り合いがあったのに、一変してしまいました。検査をしなかった食品にも、アレルギーが起きるかもしれません。
ベビーフードの成分表をみると、ただの野菜のマッシュにもデキストリンや小麦でんぷんなど、家庭で作った場合には入らないものが入っています。月齢が進むにつれてベビーフードに使われる原材料の数も増え、どんどん市販のものが使えなくなっていきました。グラタンなど洋風献立のベビーフードのほとんどには小麦粉や油が使われていますし、和風のものはしょうゆやゴマを避けて通れません。
いきおい手作りに頼ることになるのですが、親の食事の取り分けではすまないため、そのつど離乳食を別に調理しなければなりません。しかも限られた食材の中で栄養のバランスも考え、いかにバリエーションを持たせるか。
ゆったりと子どもの相手をする時間もままならず、台所に立ったまま一日が終わるような気がするときもありました。


また、偏差値世代の母親である私は、よその子がどんどん離乳が進んでいくのにちっとも進まないわが子を見て、あせりにも似たいらだちを感じていました。体格のよい子、発達の早い子、たくさん食べられる子の母親が偉そうに思えるのです。そうなると全身ジクジクで見た目も悪く、食事にも手のかかるわが子がかわいく思えなくなってしまうのです。
アレルギーがある場合、他にも掃除や洗濯などで手が抜けません。忙しいときにベビーフードが使えれば、気持ちにゆとりを持って子どもに向かうことができるのに・・・と思いました。


やがて子どもも1歳になり、夫の実家のある名古屋に帰省しました。授乳中なら、行き帰りの行程でおなかが空いてもとりあえあずおっぱいを含ませておけば事足りていたのですが、断乳してしまうとそうもいきません。
レストランで大人が頼んだものを取り分けることもできず、水分の多い薄味の離乳食では長時間持ち運ぶのも衛生面で不安があります。帰省の場合は実家で自分が調理できるのでまだよいのですが、旅行となるとつい尻込みをしてしまいます。ちょっとした外出でさえ、午前中だけとか、昼食を済ませてからとか、生活が全部子どもの食事時間に左右されてしまうのです。
アレルギーのあるこの子でも安心して食べられるベビーフードがあれば、どんなによいかと思いました。


また、土曜・日曜には夫に留守を頼んでアルバイトに出かけることもありました。おむつ替え、ミルク作り、お散歩などはカンペキな夫でしたが、ごはん作りは苦手です。

仕事のある日は夫の分と子どもの分の食事を用意していくことになりました。慌ただしい朝はそれも大変で、こんな時だけでもレトルトのベビーフードが使えたらどんなに楽かと思ったものです。


こんな大変な思いをしているのは私だけなのでしょうか。消費生活アドバイザーの資格を持っているけれども、妊娠中だったり小さい子どもがいたりで職に就いていないお母さんたちが家庭にいても何かできることはないかしらと自主的に集まって作った「子育てグッズ研究会」の中でこんなおしゃべりをしたところ、メンバーの中にも子どものアレルギーで食事にとても苦労している、という人がいたのです。


平成4年度の厚生省が発表した『アトピー性疾患実態調査報告書』によると、「今までに『アレルギー疾患である』と医師に言われたこと」がある乳幼児は3歳児で38.9%にも上り、ほぼ10人に4人の割合で何らかのアレルギーを持っている、というデータが出ています。
この数字は、アレルギーを持っているうちの子はベビーフードが食べられなくても仕方ないような「特別」な子ではない、ということではないでしょうか。言い換えればこれからの時代、生まれてくる子はみんなアレルギー予備軍であるともいえるわけです。


また、平成7年、厚生省の『乳幼児栄養調査』によれば、前回(10年前)の調査では半数以上のお母さんがベビーフードを「ほとんど使用しなかった」と答えているのに対し、今回の調査ではそれが3人に1人と減っており、「手作りの方が愛情がこもる」「中身がわかって安心」など手作り派お母さんでさえ半数近くがベビーフードを「ときどき使用した」と答えています。


さらに同年12月、厚生省が15年ぶりに改訂した『離乳の基本』を見ると、離乳を終える時期が生後12カ月から15カ月に延長されています。ということはベビーフード年齢がそれだけ広がったということで、それに後押しされるかのようにベビーフード業界は活況を呈しているようです。
日本ベビーフード協議会によると、出生率が減少する中、販売額はここ数年毎年1割ほどの伸びを示しており、過去最高を更新し続けているそうです。アレルギーがあって今までベビーフードが使えなかった子も食べられるものが開発されれば、もっともっと需要のすそ野は広がるのではないでしょうか。

他のメンバーの賛同も得て、現在市販されているベビーフードでもアレルギーの子が安心して使えるものはないのか、どんなベビーフードだったら理想的なのか、研究してみることにしました。

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