【子育てグッズ研究会】表紙



子育てから見えてきたもの --- そして21世紀へ
「消費生活関連実務者懇談会」発表報告(5月22日)
 
只今ご紹介にあずかりました子育てグッズ研究会の今川と申します。本日はこのような立派な会にご招待いただきましてありがとうございます。今回のお話をいただいたとき、私どものような地味な研究会には場違いではないかと思ったのですが、気を取り直し企業や行政に勤めていなくてもできることはたくさんあるはずということをアピールしようと出て参りました。

この研究会は、アドバイザーの資格を取得しながら子育て中で仕事に就けない母親が、何かできることはないかと集まったのがそもそもの始まりです。育児中に必要な商品やサービスについて母親として実際に使用した体験をもとにアドバイザーの視点を生かして研究し、消費者や企業・行政に情報提供や提案を行っていきたいと考え活動しております。

では、活動の一例を紹介させていただきます。松下電器産業とマザーズクラブが共同企画・運営しているホームページ「ママのひろば」におきまして、昨年8月よりレポートやエッセイを掲載しております。こちらが子育てグッズ研究会の表紙になっております。
次に1997年度商品研究大賞奨励賞を受賞しました「アレルギーッ子も食べられるベビーフードはありませんか?」がこちらの画面です。
研究会のメンバーの中に食物アレルギーの子供がいたことがきっかけになり、アレルギーのある子もそうでない子も一緒に楽しく食べられるベビーフードを提案してみました。

これは余談ですが、いくつかのメーカーにアドバイザーとして問い合わせたときと、一消費者として問い合わせたときとでは対応の仕方に違いがあったことがとても印象的でした。
その他チャイルドシート、幼児用通信教育、お客様相談室に提案しよう、託児サービスなどのレポートを掲載しました。
こちらが今月初めより掲載されている紙おむつのレポートです。メンバーの一人がお子さんを実験台にして、各メーカーの紙おむつを使い比べ、お客様相談室に問い合わせた結果です。 

ママのひろばをご覧になった方から「商品選択の際に役に立った」「いろんな商品について比較して欲しい」「アレルギーッ子を持つ親の大変さがよくわかった」「自分にも同じような経験があり今後の参考にしたい」など感想や要望をいただき、励みになると共に今後に生かしていきたいと思っています。 
 

次に今年の4月に小冊子「ちいさい目大きい手」を発行しました。これを作るきっかけになりましたのは、子育てをしにくい社会の中であふれる育児情報に振り回され孤軍奮闘している母親達―それは私達アドバイザーも例外ではありません、そういった同じ立場にいる人たちに「上手に使って楽しく子育てしよう」というメッセージを送りたかったことが一つ。

二つ目は研究会として今までの活動を形にしたかったという思いからです。今週月曜日に読売新聞に小冊子の紹介記事が掲載されたところ、今日までに100件近い申込みや問い合わせがありました(6月末現在1000件)。
中には、「子育て1年生で不安な日々を過ごしています」とか「商品を買い揃えるのにいろいろと悩んでいます」と書いてきた人もおり、みんな悩みながら子育てをしているのだということを改めて感じました。では、小冊子の中からチャイルドシートについて具体例を挙げると共に今後の研究会の方向性などについて吉沢の方からご報告致します。 
 

子育てグッズ研究会の吉沢と申します。現在主にチャイルドシートを担当しております。今日は、まず私がチャイルドシートをテーマに選んだきっかけをお話しさせていただき、続いて、活動の中で感じたこと、わかったことなどをもとに、今後私たちが消費生活アドバイザーとして何ができるのか、何をなすべきか、研究会メンバー全員で考え、討議し、まとめましたことを発表させていただきます。 
 

私が住んでおりますのは埼玉県の北部、深谷市という所です。地方都市と郊外都市の両方が混ざり合ったような所で、車なくしては生活が大変不便な所です。
そのようなわけで、私も毎日車を運転しています。ですから、子どもを毎日のように車に乗せているわけで、チャイルドシートは必需品です。私は子どもをチャイルドシートに乗せなくては怖くて運転ができないのですが、周りをみてみると、赤ん坊は運転者や同乗者が抱っこやおんぶ、幼児も抱っこもしくは車内に野放しという車が大変多いのです。

そういう状態で万が一のことがあったらどうなるか、皆さんも容易に想像していただけるかと思いますが、とにかくそういった恐ろしい状態で子どもは日常的に車に乗せられているケースが大変多いのです。
何故チャイルドシートを使わない人が多いのだろう、何か理由があるのだろうかと思ったことが一点。もう一つは、自分がチャイルドシートを使っているなかで、不便なこと、困った経験がありました。
例えばチャイルドシートは子どもの体をがっちり保護するつくりになっているため、子どもにとってはかなり暑苦しいらしく、特に夏場は車内の温度も上がるため、子どもは汗だくになります。
これも夏の話ですが、肩ベルトをシートに差し込む部分についている金属製のバックルが、車内の温度が上がったり直射日光があたったりでかなりの高温になり、あやうく子どもの太股や自分の手をやけどしそうになったことが何度もあります。
またチャイルドシートは車のシートベルトで座席に固定させるわけなのですが、シートベルトがそのようなことを想定した設計になっていないのか、きちんと固定しきれず、チャイルドシートがぐらついて「これでいいのかな」と不安に思いました。 
 

「子どもがチャイルドシートを嫌がるので使わない」という話もしばしば耳にします。こういった問題をどのように解決したらよいのか、明確なアドバイスはどこにもなく、自分の子どもを実験台にして自分で、手探りで、解決策をさぐっていくしかありませんでした。これだけ育児情報が氾濫するなか、何故私が抱えている問題を解決してくれる情報がないのだろうか。 

今申し上げたようなことが、私の問題意識の出発点です。 

さて、目下子育て中の私たちは「偏差値世代」の親であり、「HANAKO世代」の親であり、「高度成長時代」に「核家族」のなかで育った世代の親です。
核家族の中で、学校と塾と自分のための生活、遊びの中で育ってきたわけですから、自分が子どもをもって親になるまで、子どもにふれたことがなく、自分の子どもを産むまで赤ん坊を抱っこした経験がないという親がほとんどです。

また華麗なる独身生活をエンジョイしたHANAKO世代ですから、あふれるモノやサービスや情報を、自分のためにはハンドリングすることは得意です。しかし、いざ子育てに関することになると、経験がないわけですから、あふれるモノとサービスと情報のなかから、自分と自分の子どもにとって何をどう選び、使っていけばよいのか、判断に困ることがたいへんに多いのです。

クチコミアドバイスに頼ろうとしても、それぞれがほんのわずかな子育て経験から得たモノサシしかもっていないわけですから、それを鵜呑みにすることはできません。
チャイルドシートを例にとるならば、購入する時、どのような種類があって、それぞれどのような特徴があって、どのタイプが自分の家の車にあっているのか、比較しようと思っても、そのような情報はどこにもありませんでした。お店の店員に聞いても「お客様のお好みですから」といわれてしまいました。

国民生活センターの「たしか目」の1996年3月号にチャイルドシートの特集がありましたが、「たしかな目」を購読している子育て中の親、などというのはまず稀でしょうし、普通の育児情報誌では「こんなものがある、あんなものがある」という情報ばかりで、使い方の注意や工夫、困ったときはどうしたらよいか、などといった本当に必要な情報が当時はありませんでした。ただただあふれる情報に翻弄され、混乱し、不安になることもしばしばです。 

また、子どもをもってしみじみ感じさせられることは「この社会はなんと子連れにとって住みにくい社会であるか」ということです。私たちはほとんどが核家族ですから、外出するとなると子どもを連れていかなければならないことが多いのですが、車の交通量が多い、段差の多い道、階段だらけの街はベビーカーを押す親に「外出するな」といわんばかりです。

先日我々研究会のメンバーの居住地において「鉄道及び公共施設の子連れサービスの実態調査」をおこなったところ、最近百貨店やスーパー、ファミリーレストランなどでは子連れ向けのサービスや施設がかなり充実してきているにも関わらず、公共施設においてはあまり充実していないという結果がでました。
こちらの表をご覧下さい(詳しくは、レポート「足どり軽くお出かけしましょう」をご覧ください)。子どもと共に入れるトイレ、おむつ交換台、授乳室、エレベーター・エスカレーター、それらの表示の有無を調査したのですが、エレベーター・エスカレーターはまあまあなのですが、トイレ、おむつ交換台は設置率が低く、授乳室に至ってはほとんどどこにもないという結果でした。
また設備があってもそれを表す表示がほとんどないという結果もでています。つまり、仮に設備やサービスがあったとしても、その情報が親たちにわかりやすく、いつでもどこでも誰でもが手に入れられるようにはなっていないといえるのです。  

子連れにやさしい設備やサービスの整備が不十分であることに加えて、正確な情報も手に入れにくい状況におかれている私たち子育て中の親は、この社会において「子連れは弱者である」ということを、そしてこの社会が弱者にとっていかに住み難い社会であるかを、日々身をもって実感させられます。
子どもや子連れにとって住み難い社会、それはそのまま障害者や高齢者といった、やはり今の日本の社会において弱い立場におかれている人たちにとっても住み難い社会であるといえます。私たちは自分がそのような立場になるまで、そのことに気付かないのです。
さらに、弱い立場におかれている人が「こんなに住みにくいんだ」「こんなに不便なんだ」「こうしてほしいんだ」と声をあげたとしても、それが社会にきちんと反映されるシステムもありません。自分の子育て、そしてそれに関わるモノやサービスの研究を通して、私たちはそういったことを身をもって経験し、知ることが出来ました。 

それでは私たちのように、今の日本社会における「社会的弱者」の立場にたった経験をもつ消費生活アドバイザーが、アドバイザーとして何を目指すべきか、何をなすべきか、について私たちの意見を述べさせていただきたいと思います。 

まず、先ほども述べましたように、社会的に弱い立場におかれている人々の「こんなに住みにくい」「こんなに不便」「こうしてほしい」「ああしてほしい」という声を社会に反映させていく役割があると思います。
今の社会では、社会的弱者ではないとしても、消費者が企業や行政と対等にコミュニケートできる立場にはない、すなわち普通の消費者も企業や行政の前には弱い立場にあるといえると思います。つまり一消費者としていくら声をあげたところで、「参考にします」「前向きに検討します」といった言葉でかたづけられてしまうのが現実です。そういってしりぞけられた声の中に、実は企業にとってはマーケティング・商品開発・宣伝の、行政にとっては政策立案・実行・法律制定等に非常に有効なヒントがたくさんかくれているのです。
それらのかくれたヒントをきちんと拾い上げて、社会に通用する声、形にして、企業や行政に伝えていく、通訳の役割を私たちは担っているのだと思います。 

これは逆もしかりで、先ほど子連れ向けサービスの実態調査のところでも申し上げましたように、企業や行政が「実はこんなサービスを行っている」「こんなに便利なモノがある」ということが、私たち一般消費者のレベルになかなか伝わってこないわけです。
せっかくあるものなのに、利用されなければ意味がありません。そういった情報を、今度は逆に消費者に伝えていく、私たちはそういった役割も担っているのです。  

次に私たちを取り巻く人々、例えば子育て中であれば祖父母、幼稚園や保育園、学校の先生、地域社会の人々などに、正しい情報を提供していくことです。
チャイルドシートを例にとるならば、私が子どもをチャイルドシートに乗せていると子どもにむかって「まあ、そんなところに縛り付けられてかわいそうねえ」とか「ママは抱っこしてくれないの?」などどおっしゃって下さる方がたくさんいるわけです。

親がせっかく正しい情報と判断に基づいて、子どもの安全のためにやっていることが、まちがった情報や判断にもとづいた無責任な周りの言葉で無になってしまう、
これは大変困ることです。こういったことをなくすためにも、ひろい範囲での情報提供、教育をおこなっていくことが是非とも必要であると思います。 

次に、今私たちが育てている子ども達は、まさに「21世紀を担う世代」です。この子ども達を、企業や行政と対等な立場でコミュニケートできる「自立した消費者」「自立した生活者」として、さらに「社会的に弱い立場にある人々の視点にたてる」人間に育て、社会に送り出していくという使命があると思います。

そのためにも、まず私たち自身が「自立した消費者、生活者」になること、そして弱者の声を社会に反映させてすこしでもこの社会をすみやすくするにはどうしたらよいのかを、考え、実行に移していくことが、私たちに課せられた使命ではないでしょうか。 

私たちは消費生活アドバイザーであるとともに、またそれぞれの社会的肩書きにあらわされた立場にある人間である前に、まず、一消費者であり、一生活者であり、そして、一人の人間である、ということを忘れてはならないと思います。
皆が等しく、子ども時代を経て、いずれはまちがいなく高齢者になり、明日何らかの障害を持つ身になる可能性をももっているのです。そのことを忘れて健常者のモノサシだけでものを考え、行動し続けるならば、そのツケはめぐりめぐって必ず自分の身にふりかかってきます。
現にそのツケは、環境破壊などという形を取って、我々にふりかかってきています。これ以上このツケが拡大しないようにしなければいずれ自分たちで自分たちの首をしめる結果になると思います。 

高齢者の割合が4人に一人になるといわれている2015年、その頃には自分たちが何歳になっているか、みなさん考えて見て下さい。その時になって「ああ、なんて住みにくい社会なんだ」と嘆いても、もう手遅れなのです。 

そうならないために、真の生活者主導型社会をつくるために、そして社会的弱者の声もきちんと反映されて、すべての人にとって住み良い社会をつくっていくために、声にならない声、しかし聞くべき声を集めて大きく社会に反映させていくために、アドバイザー同士ネットワークを組み、今、行動を起こしていくときであると思います。 

21世紀、2001年まであとわずか2年7カ月です。少しずつでも、身近な所から、できることから、皆さんとネットワークを組み、行動を起こしていきたいと考えております。 


 

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